友愛5月号—松本滋恵さんの韓国PAX報告

友愛
特定非営利活動法人ワールド・フレンドシップ・センター機関紙

韓国RAXに参加して
松本滋恵


4月30日から5月5日まで韓国PAXに参加しました。この旅行では、通常では参加、訪問しない所に行き、貴重な経験をしました。

まず、毎週水曜日、日本大使館前での慰安婦の抗議集会が行われており、5月1日が水曜日に当たり私たちは参加し、次に、午後、西大門刑務所歴史館に行き、更に2日は日本軍「慰安婦」歴史資料館を見学し「ナヌルの家」においてハルモニに会いました。それぞれ旧日本軍の負の遺産です。

水曜日抗議集会では、始まる前にメソジストの牧師のメッセージと祈りがありました。韓国語が分からないので、何を言っているのか分かりませんでしたが、聖書マタイ5章44節には「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」とあるのに、抗議集会にどのようなメッセージをし、どのように祈るのであろうか理解出来ませんでした。

西大門刑務所歴史館は、日本植民地時代に独立運動家らを収監し、第二次大戦後は韓国政府が使用した獄舎などを保存公開しています。かつて、拷問と死刑が行われた施設です。

ナヌムの資料館では日本人の矢島宰さんが、慰安婦問題を初めて抗議、表明した姜徳景さんの活動のビデオを見せて下さり、彼女が心理ケアーのため絵を描き、その絵を見ました。それぞれの絵は、彼女の心の叫びが表現され、見る者に彼女と共鳴するところがありました。その後、二人のハルモニにお会いしました。二人は同姓同名で歳も同じ93歳との事でした。一人の方は淡々とした表情で語られましたが、心の根幹には何物にも屈せず、貫き通す強い信念がある方だと思い、「何がしたいか、何がしてほしいですか」と伺ったところ「謝罪と賠償だ」と言われました。もう一人の方は屈託のない明るい性格の方でした。

2日の夜、私は謝罪をし、被爆証言をしました。証言の後、質疑応答の時「原爆でひどい目に会っているのにアメリカに謝罪を求めないのか」と言われ、私は「アメリカ人の多くは、原爆によって早く戦争を終わらせたと肯定しています。日本には嫌なものは水に流す、臭い物には蓋をするという諺があり、多くの人は謝罪を求めていません。若い人は日本とアメリカがかつて戦争したことを知らない人もいます。現在の核は広島に投下した原爆の4000倍の威力があり、1発落とすと地球上の半分は放射能に汚染されます。人道上、そのような威力のある物を使用出来ないのに何故保有するのか、核廃絶に向かわなければと運動をしています。」と応えましたが、理解していただけたかどうか分かりません。

韓国には「恨」という文化があり、日本人には理解できないほど憎しみを長期期間持つそうです。しかし、キム・ヨン・ウン氏(『社会心理学』1989)は「韓国民は非常に寛大であり、他人を許し、恨により自分たちの運命を甘受することができる民族である」と指摘しています。どちらも真実なものと思います。韓国の方が戦争の最高責任者の謝罪を希求する気持ちは理解できます。しかしもし、後者のほうを支持している人が多ければ和解の糸口が見えるのですが。現在日韓問題はギクシャクしています。若い人の力でこれからの日韓問題を解決してほしいと念願します。

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